ANVIL
人によって見方は色々だろうが、個人的には先日見た「This Is It」と双璧、或いは真逆と思われる映画「ANVIL」を観てきた。この2つの映画が偶然とはいえ同時期に公開されていることには妙な因縁を感じる。
Michael Jackson が過去から現在に至るまでビッグサクセスを邁進してきたアーティストとするなら、こちら ANVIL はビッグサクセスに向かうと思いきや、一気にどん底に沈んだアーティスト。そんな連中は山ほどいるだろうが、彼らが違ったのは50代後半にも差し掛かろうかと言う今現在ですら、ロックスターを夢見て、違った意味で邁進していること。
パフォーマーにとって、This Is It が体を目覚めさせる天上界の話ならば、こちらは体に沁み入る現世の話って感じかな? もちろん、どちらもドキュメンタリーである。
今でこそ雅楽だ何だと言っているが、10代半ばの頃はヘビメタ(当時はハードロックと言っていた/ちなみに Ritchie Blackmore 派)一色な時期を過ごしていた。今はそのヘビメタも色々と細分化されているが、この ANVIL は最初に分化を起こしたスラッシュ系の元祖のような存在か? 当時 ANVIL と競演し、その影響を公言している「BON JOVI」「METALICA」「Guns N' Roses」などはメジャーシーンでビッグアーティストとなり、ANVIL は鳴かず飛ばずのままインディーシーンへ...
彼らは“クール”という言葉からは程遠い存在感で、電車で隣に座っていても不思議ではない感じ。が、(楽曲的には俺の好みではないけど)演奏技術や楽曲構成力はさすが!と言った感じ。オーソドックスなスラッシュメタルのスタイルを今に伝える伝統芸の域かも知れない。
映画中、大きなツアーやライヴ話に舞い上がってはトラブって凹んだり、自信作のCDを売り込んではメジャーにそっぽを向かれるシーンは、実感が伴って痛々しい。...というか身につまされるものがある。少なくとも This Is It のような娯楽感覚で楽しむことはできない何かがあるんだな。
しかし、30年も「憧れ」をあきらめずに現役で突っ走っている姿には、これまた脱帽です。
個人的には「This Is It」と「ANVIL」はセットで観てほしい作品かもしれないな...
『男は勇気付けられ、女は呆れる映画』 ... と締め括っておこうか
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