元禄十四年
『ときに元禄十五年十二月十四日、江戸の夜風をふるわせて、響くは山鹿流儀の陣太鼓、…』 ...とくれば、お馴染みの忠臣蔵、というか赤穂事件。この発端となる「刃傷 松の廊下事件」は元禄十四年三月十四日。
今夜、民間雅楽界の重鎮の一人である某氏のお宅に所用があって伺った。この方、漢詩に対する造詣が深いのだが、色々と話しているうちに家の納屋にあったとおぼしき面白い物を見せて頂いた。
これ、元禄十四年(1701年)に発行された「坂東三十三観音」のガイドブック。その方のご先祖が使われたものらしい。元禄十四年と言えば、今から300年以上前。
「坂東」とは箱根より東の今で言う関東地方のことで、神奈川・東京・埼玉・群馬・千葉・栃木・茨城。
そして、今現在発行されている「坂東三十三観音」のガイドブックと見比べてみたのだが、これがまた面白い。
寺籍や御詠歌は当然同じ。昔の挿絵と今の写真も何となく似ている。
決定的に違うのは順路案内。今のは車での行き方や電車の乗り方が書いてあるが、昔のは“●●村から3里 ~ ▲▲村から2里 ~ ■■村から2里”と言った具合。
あと、写真ではわからないかも知れないけど、書かれている自体が独特。流麗な続字のようだが、草書ではなく、当時の一般的な字体なのだろう。
そしてこちらは享保二年(1717年)に出版された漢詩の本。これも先祖から受け継いだものだそうだが、後年、これと同時に出版されたガイド本を入手されたらしく、その本の裏には「●南藩 ▲▲氏」とあった。きっと武家の方が漢詩の勉強をされたのだろう。
こちらは孟子の儒教本。裏に「明治改年」と書いてあるので、江戸末期に使われていたものだろう。よく見ると表紙に三葉葵の浮紋が施してあり、江戸幕府の公刊だろうとのこと。
俺自身は漢詩は皆目わからんけど(学生の時、漢文の単位を落として留年しかかったくらい!)、中身より何より、何百年も前の人が実際に使っていた痕跡にリアリティを感じずにはいられなかった。
最後に ... その方の家系は代々、こういったものへの見識が深いようで、お爺さんが書かれたというこれを見て驚いた!
なんと、旧約聖書すべてを写経ならぬ写書(?)されたものらしい。(ちなみに、その方の家は仏教徒です)
あり得ないくらいの文字の緻密さと正確さ。驚愕するのが、モーツァルトの譜面並みに誤字がないこと。
これ、80歳くらいのときに書かれた物なんだそうな
最近のコメント