ロールス・ロイス試走...いや、試奏
...と、まぁ、先日届いた“カポ界のロールス・ロイス”こと、Elliott(McKinney) Elite Capos をあれこれ試してみた。
普通に入手できるカポの10倍の値段だけあって、さすがにモノとしての質感というか完成度は高い。実際の有用性を別にしても、宝飾品のような“所有欲”を引き起こす製品だと思う。
実際に装着してみて感じたこと...
- 剛性がしっかりしてるのに小さい → 安心感があって邪魔にならない
- 装着箇所による音質差が大きい → フレットとの間隔がシビアに反応する
- チューニングが狂いにくい → カポ装着のストレスにならない
- 音がこもらない → カポ付きでオープンコードを多用しても気にならない
...そして何より
- 気分が良い! ← これが1番大事
では、現在愛用している NS Capo(右側) との比較写真
一見、Elite Capo は華奢に見えてしまうが、ステンレスで作られている(NS Capoはアルミ)ので剛性は色んなカポの中でもかなり高い方。それでいてトップ、サイドともに細く作られているので演奏の邪魔にならないのだ。
次に装着箇所。“Elliott(McKinney) Capo が最高!”というギタリストは多いが、彼らがライヴで使っているのを見たことがない。前々から疑問だったその謎が解けた。装着位置による音の変化がシビアなのだ。良い位置だと“すげー”と思うのだが、適当な位置に付けると普通のカポと変わらない
一緒に届いた Elliott さんからのメッセージをよく読むと『フレットの際から 1/8 インチの位置に装着するのが最適です』と書いてある。...1/8 インチって、3.175ミリの指定かよ 実際、その位置に付けると
な音ですわ
剛性の高さとバーの細さの仕業かな?
これって、スイートスポットが狭いわけで、レコーディングや自宅などゆっくり弾けるときは良いけど、ライヴでパッパと付け替えるときは不利ってことなんだよな。考えたら...街中の狭い路地をロールス・ロイスでぶっ飛ばす奴はいない その意味では適当に付けてもちゃんとした音を出す NS Capo はスイートスポットが広いわけで、カポ界のプリウスと言ったところか?(アルミだから軽いしね!)
裏側の写真と、特注の証(右側)
カポはフラットに弦を押さえる必要があるので、両側から引っ張る方が良いのは物理的に自明の理(片押さえでも NS Capo や G7th Capo は設計的にここを見事に処理している)。力の掛かり方に偏りがない上に、ネジで調整しやすいのでカポの宿命であるチューニングの狂いは少ない。
が、同じ方式でも狂い易いものはあって、トップバー(の被覆)の素材が大きいのかな?と思う。NS Capo はアルミ下部に硬質ゴム、Elliott Capo はステンレスを硬質ビニール(?)でくるんである。経験上、ここの素材が良くないとチューニングが狂う上に、倍音が吸い取られてこもった音になる。実際、この“こもり”を嫌って反カポな人もいる。
その意味でも Elliott Capo や NS Capo はおすすめです。G7th カポはある意味、この“こもり方”のバランスが絶妙で、指でバレーした時のような音になるので開放弦の派手さを嫌うインスト系の人にはかえって良いかも知れない。
Elliott Capo とほぼ同じ設計で、“カポ界のベンツ”と呼ばれている Paige Capo(右側)との比較写真
値段的には普通で、“ベンツ”と呼ばれているのは多分に Elliott Capo のロールス・ロイスに対する揶揄した言い方だと思う。
見ての通りかなり似ているし、デザイン的には好きなのだが、難点がいくつか...
- トップバーを Elliott Capo のように上からはめ込むのではなく、サイドをたわませて横から回して引っ掛けるので装着が面倒。
- サイドをたわませられるということは剛性が低いことを意味し、その影響か幾分低音が逃げてシャリっぽい音になる。
- トップバーを引っ掛ける部分が尖っており、装着時にフレットボードやネックサイドを傷付ける恐れがある。(かなり致命的)
- ネジの巻きは Elliott Capo より優れていて調整しやすい。
と言った感じかな? 個人的には“おしい”って感じ。
長々と書きましたが、Elliott Elite Capo、結論的には“メッチャええやん”です。使い捨て感のあるカポにおいて、一生モノとまでは言わないまでも、それに近い感じ。カポを使い始めて30年
しまう前にクロスで拭きたくなるカポは初めてです
ちなみに Elliott Capo(Elite だけでなく何種類かラインナップがあります)は一般に売られているカポとは違い、トップバー長さのサイズが色々あります。俺もオーダーする前に自分の使っているギターのナット幅とか、装着する最大フレット位置のフレットボード幅などを職人の Elliott さんとメールでやりとりして最適長をアドバイスして貰いました。
楽器店などではサイズが選べないので、欲しい人はHPから直接個人輸入した方が良いです。営業妨害になるかも知れないけど、送料(保険付き速達)を入れても楽器店で買うより安いです。店によっては3万以上しますから...
あと...Elliott Capo はアコギやカポに関してある程度マニア域の人にはおすすめしますが、そうでない方には NS Capo か G7th Capo をおすすめします。少なくとも最初に買うカポではありません ROI 的に後悔すると思われるので
しかし、ゴム(エラスティック)カポかテコ(トグル)カポしか選択肢のなかった頃から考えると、すごいなぁ 縁の下の力持ちも確実に進化している...
そして最後に...“スーパー同志よ、ありがとう!”
※Elliott Capo,NS Capo,Paige Capo ともに私が所有しているモデル(それぞれ Elite Capo,NS.Pro, Click Capo)での感想です。各社、他にも色々なモデルがありますので注意して下さい。
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コメント
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うわ〜すごい!
(一見すごそうでないのに、読めば読むほど興味津々!)
でも、なんだかよくわからん。
しかし欲しい、と思ってしまった。
ZOWさん、ギターはこれでうまくなりますか?
投稿: KOW | 2011年1月 9日 (日) 21時17分
■KOWさん >
> ギターはこれでうまくなりますか?
むむむっ、なんという鋭い質問
お答えしましょう。
良いギターと良いカポがあれば、上手くなった気がします
例えれば、雪質の良い圧雪バーンのようなもんでしょうか?
でもねぇ、この『勘違い』って色んな意味で重要だと思う。欧米系のミュージシャンのあのオシの強さは、この勘違いを信じきって自信にしちゃうところなんだよな。
良くも悪くも、日本人ミュージシャンは客観的過ぎるのかもな...と思う今日この頃
投稿: ZOW | 2011年1月 9日 (日) 21時40分
いやー、早速のレポートありがとうございます。
しかし、見とれますな。造詣がすばらしい。

「値段分だけのことはある」とはこのことですね。
(あと写真もすばらしい)
取り付け位置が限定されているなんて、
そのわがままな風格も値段相当ですね。
音についてはZOWさんのレポートでよくわかりますが、
いいのものはクロスで拭きたくなりますよね
いつまでも大切にお使いください。
投稿: 浅草だぬき | 2011年1月10日 (月) 07時51分
■浅草だぬき さん >
そうなんです、高く(或いは、古く)て良いモノはワガママなんです。それをカワイイと思えるか否かがマニアかどうかの分かれ目でしょうな
コンビニエンスなものは便利だけど愛着がわかない。楽器はもちろん、人もそうかも?
その意味では、最近の高くて手間の掛からない優秀な「モノ」にはあまり興味が沸かない。
そうそう、今のところ載せる予定はないですけど、浅草だぬきさんがもっと喜びそうなモノを今度お見せしますよ。面倒、我が侭だけど可愛い小悪魔。
ちょっと前に預けて、そろそろ帰って来る頃なんで...
考えたら、これまたロールス・ロイスに縁のある品ですわ 
投稿: ZOW | 2011年1月10日 (月) 18時43分